HOME>切ない誕生日ケーキ
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これまで、色々な誕生日会に出席して来ました。古くは、自分が小さい頃の友人の誕生日会。最近なら、友達同士でそれぞれの誕生日を祝うものなど。常に毎回、沢山笑って沢山食べて、といった楽しいものでした。 この仕事を始めてから、過去に経験した、どうしても忘れられない誕生日会があります。その話をしてみたいと思います。 私が担当させていただいている、ある重い障がいを持った女性の話です。 彼女の誕生日は、その日が過ぎてしばらくたっていました。誕生日にあわせて、私もささやかなプレゼントとカードを渡しました。そして数日後、通院のためのガイドヘルパーの仕事をするため、私は彼女の家に出向きました。 通院は無事に終了し、家に帰りました。すると、お母さんがばたばたと帰宅してきました。手には彼女のための、誕生日のケーキ。 |
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彼女の誕生日は過ぎていましたが、家でのお祝いはしてもらっていなかったのです。その日も、仕事で疲れきったお母さんがどうにかこうにか時間を都合つけてやっと買ってきた、という感じでした。 そのケーキを皿に盛って、3人で小さなお誕生日会を開きました。「ハッピーバースデー」を歌って、おめでとう!!と私とお母さんが言いました。お母さんは、何度もその利用者さんの写真を撮っていました。 彼女が長生きできそうにない状態であり、だからこそ、できるだけ好きなことをさせたい、というのがお母さんの思いでした。そして、お母さんにとって彼女の誕生日をお祝いする日というのは、とても重要な日だったのです。 来年まで生きられるだろうか・・というのが常にお母さんの頭の中にはあるのです。お母さんは、彼女が喜ぶような目標を沢山一緒に立てます。そして、どうにか、どうにか、来年も誕生日をまた迎えたいと願うのです。 私たち健常者と呼ばれる者だって、1年後はどうなっているかは分かりません。ですが、彼女の場合、確かに、来年まで無事だろうか・・と考えてしまうほど、容態は良好ではありませんでした。 これまでどんな誕生日会でもへらへら笑っていた私ですが、この誕生日会の時だけは、すごくケーキも美味しいのに、楽しいのに、一瞬の隙をついて涙が溢れそうになるのです。ケーキも喉につかえるのです。あんな風に切なさに包まれた誕生日会は初めてでした。 障がいを持った子供を持つお母さんはこういう気持ちをもっておられる方も多いと思います。だからこそ、ヘルパーの仕事をする時は、どれだけ短い時間でも、少しでも利用者さんに楽しく過ごしてもらおうと堅く決心した日でした。 |