HOME>手をつなげない間柄〜ガイドヘルパー(移動介護)体験記〜
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私がホームヘルパーやガイドヘルパーを始めてしばらく経ちますが、支援費や介護保険制度が始まる以前からお付き合いのある利用者さん達がいます。
勿論、当時はホームヘルパーやガイドヘルパー、利用者、という立場ではなく、知人、友人、といった感じでのお付き合いがあった方々です。 先日、そんな関係の一人である、ある利用者さんのガイドヘルパーとして外出援助の仕事をしてきました。 知的障がいと身体障がいの両方をお持ちの、年齢の若い女性の方です。 長い付き合いのある方なので、 体調なども長期に渡って知っています(・・の、つもり・・)。 最近はかなり調子が悪そうです。 少しの事で怪我をしてしまうから家に長時間いるようになり、その事が原因で更に体力が落ち、怪我をしやすくなる。怪我をしやすくなるから用心して外出も避けるようになる・・。 こういう状況が続いています。 悪循環、というか。 悪循環だと簡単に言ってしまいたくはないのですが。 そんなわけで体調や天気など、色々な事に左右されやすい状況にある利用者さんなわけですが、それでも利用者さんの体調と予定を頻繁に確認して、やりとりも何度もして、少しだけ、一緒に外出することになりました。 2005年6月のことです。 梅雨のはずなのに雨の殆ど降らない日々が続き、 この日も快晴。 季節を通して言えることなのですが、この利用者さんの場合、曇りくらいがちょうどいい。そうでないと外出が辛くなるのです。 日差しが強いとそれだけで外出を中止する場合もあります。これに寒さ、暑さが加わってくると更に外出が困難になります。 6月ならまだまだオーケー、どうにかオーケーでしたけれど。 とても風の強い日でした。 「風がふけば飛ばされそう」という表現がありますが、利用者さんは本当に風に飛ばされそうになったのです。 勿論、本当に飛ばされるわけではないのですが、風がふくと、まっすぐ歩けない、体が左右に揺れて、その場に立ち、体を支えているだけで精一杯なのです。 私は慌てて手をつなぎました。 この方とは付き合いが長いんですが、手をつないだことがなかったんですね。 なので、無茶苦茶照れました。 他の利用者さんだと手をつなぐことはあるんですが、この利用者さんとはそういう経験がなくて。 手をつなぐ、という行為は、多分、この利用者さんは好きではないのです。 この方は、大人としてみて欲しい、といつも言っておられます。ですが、見た目があまりにも若く見えすぎるため、どうしても世間では子ども扱いされてしまう。 手なんてつながれたらまさしく「連れて行かれる」みたいな気持ちになるんだと思います。 なので私はこの利用者さんとは手をつながずにこれまで来たんですが、このときばかりはそうもいかず。 車椅子を用意していたわけでもないので、風でよろけそうになっている利用者さんとは、手をつなぐのがベストだったんですね。 ・・まあ、実際には照れている場合でもなかったんですが。転倒されたら大変なことになりますから。 これまでもこういうことがあったとき、手をつなごうとしたことがありましたが、拒否されてきました。 ですがこのときばかりは利用者さんは何も言わず。私達は黙って手をつないでタクシー乗り場へと向かい、家路につきました。 この日の外出援助の仕事が終わった時、 利用者さん宅の玄関での別れ際、利用者さんは「今日は外出できてよかった、感動した」と言って下さいました。 「感動した」という表現はなかなか大げさ?というか、 感動していただくほどの事はしてなかったような気がしたのですが、 それでもとても嬉しかったです。 風が強かったから無事に帰れただけでも、利用者さんにとっては「感動」だったのかもしれません。 私は、勿論、「今日は初めて手をつないで私も感動でした〜」とは言いませんでしたよ(笑)。 |